仁丹やめますか、それとも
仁丹。
銀色の光を放つその小さな丸薬は、親父臭さの代名詞として認知されている。
……いや、「親父」じゃ利かないか。
「爺」のイメージを想起させるほどのシニアアイテムであろう。
そんな仁丹が今、なぜか私の手中にある。
それだけではない。
シャラシャラと掌に転がした幾粒かを、先ほど口の中に放り込んだところだ。
さらに言うなら、しばし舌で弄んだ後に俄然奥歯ですり潰し、口腔内に広がるその香りに恍惚としている真最中である。
あなたは仁丹を口にしたことがあるだろうか?
平成生まれのような若者には、名前すら聞いたことがないという人もいるかもしれないが、
「臭いはなんとなくわかる。食べたことはあったかなあ、美味しいものじゃないようだが。でも、あのオジサンのマークは知ってるよ。」
だいたいこんなところが大勢ではないだろうか。少なくとも一昨日までの自分はそうであった。
偶然Yahoo!オークションで古い仁丹のホーロー看板を目にしたのがキッカケだった。
「仁丹ってまだ売ってるのかな?」という好奇心から、いつものようにググって情報収集したところ、だいたい以下のようなことがわかった。
まだ普通に売っている。
医薬部外品の口中清涼剤である。
16種類の生薬からできている。
気分不快、二日酔い、胸つかえなどにいいらしい。
やはり世間では「加齢臭」的な扱い。
以前から胃に不快感を覚えることがあったので、世間の扱いを除けば興味を惹かれるに充分だ。フリスクなどのミントタブレットの代替になるかもしれない。結局あれは菓子だから、食べ過ぎると糖分過多になりそうだしな。とりあえず、話のネタに試してみるのも悪くない。
そんなこんなで、多少の恥ずかしさを感じながらも、720粒入りメタルケース付きの仁丹(確か1000円くらい)を買ってみたのである。
はやる気持ちを抑え、メタルケースを取り出す。その瞬間、思いがけず立ちのぼってきた臭い、いや香りがあった。古い薬箱を開けたときのような、お爺さんの洋服箪笥を開いたときのような、そんな香りが。今までなんとなくイメージしていたものが、明確に像を結んだ。そうかこれが仁丹か。やはりこれは紛れもなくジジイの……。
だからといって試してみないわけにはいかない。数粒取り出した銀玉は意外に小さく、口に含んでもコーティングのせいか味らしい味はない。噛んでみると硬い。負けずに噛み潰す。
「グガ」
音にするとそんな感じか、苦みが走り香りが広がる。その後確かに清涼感もあったが、正直「ウヘー」というオノマトペが相応しいような初体験であった。
しばらくするとね、またあの苦みがちょっと欲しくなってきたの。
せっかくまだたくさんあるんだからって数粒噛み砕いたら、今度は不思議なことに「ウヘー」っていう感じがないの。
スーッという清涼感に包まれて私とても幸せな気分よ。
フリスクなんかじゃ味わえない感覚なんだから。
でもそれもすぐなくなってしまって、またあの苦みが恋しくなるの。
それで気がつくとね、いつの間にかメタルケースを手にしているの……。
はい、仁丹ジャンキー出来上がり。
やばいな、これは。
いや、「大人1回10粒、1日10回まで」という用法・用量を守っていれば、おそらく健康的な問題はないだろう。逆に体内の不快感の緩和やストレス解消にもなっていいんじゃないかと思う。
ただそれでも深刻なやばい問題があって……、嗚呼!やはりそれは臭いなのだ。
口臭が仁丹臭いらしく顔を顰められる(仁丹には口臭予防の効能もあるのだが)。
自分では気付かないのだが、部屋まで仁丹の臭いがするらしい。
そのうち体だけでなく服や持ち物全てに臭いが染み付くかもしれない。
「最後のキスは煙草のフレーバーがした」は歌詞になるくらいだが、仁丹のフレーバーがしてしまうと全てオシマイである。
大問題だ。
他人から年寄り臭いと嘲笑され後ろ指さされることに耐えるだけの覚悟があるのか。
自ら青年期に幕を下ろし、早々と中年期に足を踏み入れるだけの覚悟が。
このまま常用を続ければ多くのものを失うことになるだろう。
さあ選択せよ!
「仁丹止めますか、それとも青年やめますか?」
(もう、この駄文のために費やされた仁丹の数など考えたくもない!)
否定的な事も書きましたが、実際はそれほどじゃありません(きっと)。
同じように臭いのある煙草と比べても、体への影響や副流煙等の周囲への迷惑を考えれば、より害のない「大人の嗜好品」と言えましょう。
初めて煙草や酒を飲んだとき、人は大人の階段を1つ上ったように感じますが、きっと仁丹なら3段飛ばしくらいで駆け上がったかのような気分が味わえるはずです。
驚いたことに仁丹はAmazonで購入できます。
3250粒入りでフリスクなんかよりずっとコストパフォーマンス高いですよ。
ぜひこの魅惑の銀粒を試してみてください。
みんな仁丹の臭いになってしまえばいいんだ……。
実は私も仁丹を購入した一人です。
しかも30後半の女が・・・
味は決して嫌いではないのですが・・・いや、むしろ好きな方かもしれません。
やはり問題は臭いなのです。
この間は、仕事から帰宅した主人が開口一番、「くっさー、だれや、じいさんみたいな臭いさしてるんは・・・」と言われました。
何とか臭いの改善をして頂くと、絶対に若い女性も嗜んでもらえると思うのです。
ロングセラーでありながら、売上げ自体は横ばいじゃないでしょうか。
臭い改善でかならず売上げも上がると思います。
グリーン仁丹はいかがでしょう?